ピアノの調律は
なぜ必要なのか?

調律UP④

ピアノには調律が必要、皆さんご存知のことと思います。では何故必要なのでしょうか?

このページではその理由について、皆さんにお話したいと思います。

ピアノの状態は常に変化する

『ピアノは生きています』はよく聞く言葉ですが、ではどういうことなのでしょうか?ピアノに使われている【木材】【羊毛】【クロス】などの天然素材は、温度・湿度の影響を大きく受けます。そのため、温度や湿度の変化とともに、ピアノの音やタッチにも日々変化が表れ、その繰り返しで音の狂い、タッチのバラツキなど、演奏上理想的な状態からはどんどん遠ざかって行ってしまいます。そのため『ピアノは生きている』と言われ、定期的なメンテナンス【ピアノ調律】が必要となる訳です。

 

ピアノ調律とは?

では、【ピアノ調律】とは具体的にはどんな作業でしょうか?【調律】と言う言葉はご存知でも、その内容についてはなかなか詳しく人から聞くこともないのではないかな?と思います。

広い意味での【調律】を頼むの【調律】は、ピアノの音を合わせたり、タッチを調整したりなど、ピアノのメンテナンス全般を依頼する意味で使われていると思います。実際に調律をご依頼頂きお伺いした場合には、アクションや鍵盤の動きをチェック・調整し、音を合わせて気持ちよく弾いて頂ける状態に整えることが、ピアノ調律師の仕事です。

先ほど《広い意味での【調律】を頼むの【調律】》という書き方をしましたが、他にも意味があるの?と思った方も多いのではないかなと思います。次は、狭い意味での【調律】という言葉についてのお話です。

調律師の作業には大きく分けて【整調】【調律】【整音】と、3つの作業があります。

ここでの【調律】は意味が狭くなり、『ピアノの音律を正しくあわせる作業』のことを指します。ピアノの弦は1本あたり80~90キロ・全体では約20トンもの力で張られていています。そのため常に伸びて行くこととなり、基本的には音律のピッチ(音の高さ)は全体的に低下して行くことが多いです。しかし全体が綺麗に同じように下がる訳でもなく、弦や弦が張られているフレーム等の金属、弦と接している駒などの木材も、温度・湿度により伸縮があるため、音律に対しては様々な圧力があり、ピッチの変化と共に音にバラツキが発生してしまします。そのピッチ変化・バラツキこそが【音の狂い】とよばれ、その症状は演奏者にとって不快で耳ざわりな音という形で現れます。

そのように狂ってしまった音律を整える作業が、狭い意味での【調律】であり、弦を巻きつけているチューニングピンをチューニングハンマーで回し、弦を締める・緩めるを繰り返しながら、約240本張られている弦の音律を1本1本整えることを意味します。

 

整調・整音とは?

調律以外の作業【整調】【整音】とは?次はこちらについてのお話です。

【整調】とは、アクションや鍵盤をの動作を調整する事を意味します。アクション・鍵盤にも多くの天然素材が使われているため、音が狂ってしまうように、アクション・鍵盤の状態も日々変化しています。ハンマーの動きであったり、鍵盤の高さや深さであったり、弾いたときの感触に直結しており、その状態は音にも関わりがあります。例えば鍵盤の深さであれは、0.08mm・0.15mmなどの紙を出し入れして調整を行い、88鍵ある鍵盤の動きをとても細かく調整して行きます。その他の調整部分も、1mm以下の寸度でバラツキが発生している事が多く、それら全ての動作部分のバランスを整える作業が、【整調】と呼ばれるものです。

【調律】によって音律だけを整えても、アクション・鍵盤の動きがバラバラであったり基準寸度から大きく外れていては、ピアノは思った音を出せない状態になってしまうため、【整調】も非常に重要な作業となります。

【整音】とは、ハンマーフェルトの表面や硬さなどの状態を調整し、音色のバランスを整える作業を意味します。ハンマーフェルトの状態はピアノの音にとって大きな影響があり、演奏を繰り返すことで着実にハンマーフェルトの状態は変化して行きます。ハンマーフェルト先端の形状や弾力の変化で音色は大きく変わり、鍵盤ごとに使用頻度も違うため、整音作業を行なわない状態が継続されると年々バラツキは大きくなり、音色も耳触りで奥行きのないものへとなって行きます。ハンマーフェルトを削り形状を整え、針を刺し硬さ・弾力を整えることで、音色のバランスも良いものにする。それが【整音】と呼ばれるものです。

 

良いピアノにするためのメンテナンス

以上のように、ピアノの状態を整える作業は【調律】【整調】【整音】という形でそれぞれに役割があり、またその中でも更に何工程もの作業が存在します。その全てが音に繋がっており、どんな音が鳴るのか?どんな風に音が出せるのか?ということに多大な影響があります。たとえ0.1mmの動きの変化であっても、必ず音・タッチには影響があり、各パーツそれぞれの位置・動作が連動しています。日々の少しずつの変化で徐々にバランスが崩れ、気がついた時にはピアノの状態も大きく変化していることが多いです。逆に、1つ1つの工程での調整量は少しであっても、各工程で調整が行なわれ全体のバランスが良くなれば、ピアノは素晴らしい力を発揮してくれます。それは、ピアノを楽しく弾くためにも必要なことであり、弾き手の方にもっとピアノを楽しんで頂きたい、音の面白さ、音色の変化の奥深さを感じて頂きたい、それがピアノ調律師の願いでもあり、責任でもあります。

 

ピアノを楽しんで頂くために

ピアノを弾く理由は様々です。でも、どんな時も大切なことは、ピアノや音楽を楽しんで頂くこと、その音の面白みを感じていただくことではないかと思います。趣味であっても、学習であっても、大人であっても、子供であっても、楽しい、面白いと感じられる部分があってこそより興味や探究心がくすぐられ、物事が前に進むはずです。そして、状態が悪いピアノよりも、状態の良いピアノの方が、より楽しめる、音の変化を繊細に感じられる、弾く上でより変化させられるのは、間違いありません。

ピアノを調律する、メンテナンスを行なうことは、よりピアノを楽しんで頂くためにとても大切なことです。ピアノの力をもっと引き出して、もっとピアノを楽しんで頂くための。

その想いを持ったピアノ調律師を、ピアノ調律マッチング.comでも探して見てください。皆さんのピアノが、もっと楽しめるピアノになるはずです。